風水について考えるブログです.

現代の風水は,非常に複雑な容貌を持っています.
もちろん,古代風水も単純ではありませんが,それなりに筋が通っているように思えます.
中華圏で発生した風水は, 風水であるだけに周囲の地理的環境の影響を受け,変化したようです.
さらに,世俗的な欲求から,多様な要素が付け加わっているようです.

これらを整理してみようという試みです.
 

2010年7月7日水曜日

形煞

 
 「形煞」という言葉があります.
 普通の中国語に,こういう言葉があるのかどうかわかりませんが,少なくとも,私のもっている「基礎中国語辞典」には(熟語としては)載っていません.
 ためしにググってみると,ほとんどが,日本の「風水HP」です.まれにみられる漢文も「風水」関連だけのようです.

 しょうがないので,分解して,意味を調べることに.

「形[xíng]」:形.形態.形状.
「煞[shā, shà]」:凶悪な神.邪神.悪霊.

 “形が悪い”というような意味になるのでしょうか.

 さて,では,具体的には,どんなのが「形煞」となるのかというと,例によって「具体的」になると,「風水本」はさっぱりわからなくなるのが普通です.
 だいたいが,イメージの産物で,なんでこれが「形煞」と判断されるのかよくわからないのが多いですね.

 たぶん,風水先生に相談するような人は,なにか悩み事をもっているのが普通ですから,風水先生は「なにか悪いところ」を探さなければならない.だいたいが強引に,なんでもないところに「なにか悪いところ」を見つけ出し,相談者は悩み事のせいで,風水先生が言うところの「形煞」が原因だと考えれば,対処しやすい…と,いうところでしょうか.

 ただし,その中のいくつかは,直感的にも,論理的にも,科学的にも,あまり良くない形というのはあるようです.
 その中からいくつかを.


●丁字路口
 「丁字路口」という言葉があります.風水では「形煞」とされています.

 「路口[lùkǒu]」とは「交差点」のことで,「十字路」=「十字路口」で,「T字路」=「丁字路口」ということですね.「丁字路口」自体に,もともと,とくに不吉な意味があるわけではありません.

 ところが,T字路の突き当たり部分,ここに,家を建てるのは「不吉」ということらしいです.説明としては,”T”の字の下からきた悪い気が,もろに家に当たり,悪いことをするということらしいです.

 第一に,どうして「悪い気」なのか?
 「良い気」だったら,「いいんじゃあない?」

 しかし,「良い気」も「悪い気」も判断がなくて,「この場所は良くない」と判断されるようです.
 それは,前にも言ったように,「気」には「良い」も「悪い」もないからにほかなりませんね.「良い」・「悪い」は人間の側の勝手な都合なんです.「気」は流れているだけですから,普段はなんでもなくても,脈動する気の流れが「強く」なった時,それに耐えられないような「人間」・「家」・「邑」・「国家」が倒れるだけです.
 ただ,丁字路口が悪いわけではない.

 第二に,T字路の突き当たりだと,「気」はどんどん流れ込んでくるのでしょうか.
 T字路の下棒の部分が短ければ,十分に「気を集める」こと,「気が集まる」ことができないですから,「丁字路口だから悪い」ということにはなりませんね.したがって,T字路の下棒の部分が短かければ,この議論は意味をなさないということです.

 第三には,今までの話と若干矛盾しますが,T字路はやはり危ないのです((^^;).
 実際にこういうT字路では,交通事故が起きやすい.突き抜けている方の道路を通っている車は,横から来る車なんかほとんど気にしません.
 一方で,突き当たりの反対側から来る車は,気をつけていてくれればいいのですが(「気をつける」やはりね(^^;),「気を抜く((^^;)」と,丁字路口に不用意に侵入することとなり,運が悪ければ,「出会い頭の事故」となります.
 知り合いが,この手の事故にあい,一年ほど入院通院でふいにしましたね.原因は,T字路の突き当たりに突っ込んできた車が,一時停止をしなかったせいです.


 さて,一般の家ではどうでしょう.
 普通は,あまり気にしなくていいかと思いますが,日本でも南部になると,やはり,東アジア地域特有の「台風」が時々おそってきます.
 普段はあまり気にならないでしょうけど,こういう場合は,T字路の突き当たりにある家は,「風の通り道」を塞ぐ格好になっていますから,強風の被害を受けやすい(もちろん,T字の下に伸びた道が短ければ,この場合,それほど問題にはなりませんね)
 沖縄あたりでは,T字路の突き当たりには「石敢當」なるものが普通に置かれているそうですが,毎年,台風に襲われる沖縄としては,こういうものを置いて守護としたいという気持ちは,よくわかりますね.

 ところで,商店などの場合には,T字路の突き当たりにある店は,この路を通る人や車からは,はるか遠くからみることができるので,繁盛しそうですね.
 どうですか,一概に「悪い」とはいえないでしょう.
 ただし,オートマ世代の人たちは,アクセルとブレーキを踏み間違えることが良くあるようですから,「石敢當」に相当するものを設置することと,道路と店舗の間には十分な間隔を置くことが必要ですね.


●路弓(街道反弓)

 中国のHPでは「路弓」という用語はなかなか見つかりません.
 「街道反弓」というのは見つかりますが,やはり風水HPでのこと.
 つまるところ,「風水用語」と考えて良いでしょう.

 さて,「街道反弓」とは?
 文字通りだと,「街の路がひっくり返った「弓」になっている」ということです.風水用語としては,湾曲した道路の外側に面して入り口のある建物=よろしくない,ということまで含んでいるようです.

 さて,では,湾曲の内側ではどうなんでしょうね.

 中国の故事にこんなのがあります(詳しい話,および出典は忘れました:中国の故事としては有名な話のようです).
 ある人が母親の墓を湾曲した川のすぐ傍の内側につくりました.風水上では川の傍は水気が多く良くない場所とされています.それで,その人の知り合いは,なんて無知なことをするのだと,罵りました.
 ところが時が過ぎると,川は湾曲部の外側に向かって移動し,母親の墓のある場所は乾いた良い土地になりました.

 この人は,メアンダー(蛇行)している川は,湾曲の外側に向かって移動してゆくことを知っていたのですね.風水の達人といえます.

 治水が,あまり良くおこなわれていない川は,水量が増えるたびに,激しく蛇行してゆきます.それは,湾曲部の外側は浸食域であり,内側は堆積域だからです.
 放っておくと,蛇行は進行し,内側の土地はどんどん広くなり,外側の土地は少なくなってゆきます.

 また,雪解け時,梅雨時あるいは豪雨が続く時期などには,急激な増水が起きると,たとえ堤防があったとしても,これを突き破って,川は湾曲部の外側に溢れてしまいます.

 古代風水師は,そういうことに気がついていたのでしょう.
 水にしろ,気にしろ,人にしろ,そういうものが流れる通路(龍脈)の湾曲部の外側,これは「風水が悪い」のです.
 くれぐれも,そういう土地には,お気をつけください.

 風水では,ほかにも,「彎弓直箭」,「路弓往内射」,「鎌刀煞」などと呼ばれるものがありますが,全て,これの応用です.
 彎曲する龍脈(エネルギーの流れ路)の外側は「危険!」ということです.

 普段は何事もなくても,脈動する「気の流れ」が強くなった時,我々には手の施しようがないことがある.これが,風水の教えです.

 

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