風水について考えるブログです.

現代の風水は,非常に複雑な容貌を持っています.
もちろん,古代風水も単純ではありませんが,それなりに筋が通っているように思えます.
中華圏で発生した風水は, 風水であるだけに周囲の地理的環境の影響を受け,変化したようです.
さらに,世俗的な欲求から,多様な要素が付け加わっているようです.

これらを整理してみようという試みです.
 

2010年7月16日金曜日

鬼門

 
 北東方向を「鬼門」とよぶことは,日本人ならだれでもよく知っています.
 しかし,“文献派”の教授たちが,日本でいう「鬼門」には,裏付けがないことを明らかにしてから,“ちまちま派”の風水先生でも,比較的まともな風水本には,そのことを明記するようになりました.
 でも,不勉強な風水先生は,いまだに「北東方向は鬼門」であると,(例によって)なんの根拠・証拠も示さずに断言しています.


中国の鬼門
 「鬼門」という言葉そのものは,中華圏から輸入された言葉なんだそうです(原典も,内容もあいまいなので,こういう語尾になっちまいます).
 現地では「鬼」は死者やその魂をさす言葉であって,日本の「鬼」とは意味がちがいます.また,「鬼門」の意味も,日本でいわれていることとはちがうようです.たんに,ある場所(想像上の場所)への出入り口という意味らしい.北東の方角が悪い方角という意識もないようです.
 ちなみに,日本の風水先生のいう「裏鬼門」は,中華圏では「人門」というそうです.


日本の鬼門
 日本で,鬼門がよくない方向という意味を持つようになったのは,いつのころからなのか,それもよくわからないようですが,よくわからないほど古いということでしょうか.
 しかし,こういう「方角」に「いい・わるい」があると,ものの本に登場するようになったのは,安倍晴明が書いたといわれる「簠簋内伝」だといわれています.
 「安倍晴明占術大全」「簠簋内伝金烏玉兎集」(藤巻一保,訳解説)には,ひじょうにおもしろい記述がたくさんあります.たぶん,日本の迷信といわれるものの,ほとんど全てはここから始まっているのでしょう.

   


 さて,こういう本が成立したころの日本(日本とよんでいいのかどうか判断できないですけど)は,天皇・平安貴族らの支配下にあったのは,西日本だけであって,東北日本はいわゆる“まつろわぬ民”=蝦夷(えみし)とよばれる部族がたくさんいました.
 かれら(いわゆる縄文人の末裔ですね)はどんどん,北の方に追い詰められて,のちに蝦夷(えぞ)=アイヌの成立をみることになるのですが,このころは,大和政権の安定をおびやかす存在だったらしいです.征夷大将軍という役職があるでしょう.
 そういう意味では,北東の方角には,文化の異なる=得体の知れない,勇猛果敢な部族がいるわけですから,「鬼門」のイメージと結びついたかもしれないわけです.

 また,日本史上,このあたりの時代ほど魑魅魍魎が活躍した時代もありません.実際にいたかどうかはともかくとして,おおくの人がその存在を信じていたわけです.
 晴明の「簠簋内伝」の成立は,そういう時代を背景としているわけです.


現代の鬼門
 さて,鬼門は全くの迷信でしょうか?
 そういってしまうのは,たやすいですが,そうとばかりはいえないもこともあるようです.たとえば,鬼門の方角に玄関や,台所,浴室をつくってはいけないといいます.
 知人が,家を新築する時に,鬼門を気にしていたら,建築家はそれは迷信だから気にすることはないといったそうです.それを信じて,玄関を北よりはじゃっかん東の方向につくりました.
 その年の冬のことです.
 ある朝,玄関の戸が開きません.どうしたことでしょう.

 北海道では,冬には北西からの強烈な季節風が吹きます.吹きだまりが雪を堆積し,ドアを押さえ込んだんですね.
 さらにわるいことには,車庫も,だいたいそのそばで同じ方向をむいてますから,状況はおなじです.
 かれは,毎朝,窓からでて,玄関のドアを掘り起こし,車庫前の雪かきをして出勤しているといいます.

 北海道の冬はマイナス20〜30℃にもなります.
 北側の暖房のない部屋,浴室,台所,トイレなどは,いつも寒いし,窓や壁が結露をおこします.十分な対策なしに,こういうものを置くと,あとで苦労します.
 温度差の激しい,浴室,トイレは,脳梗塞の要注意スポットでもあります.

 冗談ではなく,北側の水回り,玄関は「鬼門」なんです.
 厳密に北東ではなく,北から東方向ですけどね.



 「迷信だ」,「科学的でない」といって,否定するのはたやすいですが,なんの根拠もなく,そういってしまうのは,逆に「科学という迷信」をつくり出すことにつながります.長い間言いつたえられていることには,それなりにリーズナブルなことがあると思った方がいいのでしょう.
 

0 件のコメント:

コメントを投稿