風水について考えるブログです.

現代の風水は,非常に複雑な容貌を持っています.
もちろん,古代風水も単純ではありませんが,それなりに筋が通っているように思えます.
中華圏で発生した風水は, 風水であるだけに周囲の地理的環境の影響を受け,変化したようです.
さらに,世俗的な欲求から,多様な要素が付け加わっているようです.

これらを整理してみようという試みです.
 

2010年7月1日木曜日

「原始風水」

●「北坐南向(ほくざなんこう?)」>「坐北向南」

 「北坐南向」という言葉があります.

 私の乏しい漢語の知識からいえば,このような言葉はあり得ない.「坐北向南」の間違いでしょうね.
 ためしに,「北坐南向」でGoogleすると出てくるのは日本語のHPばかり.逆に「坐北向南」でGoogleすると,今度は中国・台湾のHPがたくさん出てきますね.

 つまるところ,「北坐南向」なんて言葉が書いてある「風水本」や「風水HP」は怪しいということです.

 もうひとつ.
 風水は「陰陽五行説」を基本とするのが原則の筈ですが,これまでのところ,読んだ「陰陽五行説」の本には,「坐北向南」を「良」とする根拠はもちろん,「坐北向南」という言葉すら見つかりません.

 なんででしょう.

 一方で,「南向き緩斜面」は生活にも,農作業に用いるのにも良い土地だということは,別に風水を用いなくてもわかることです.もちろんこれは,北半球の温帯から亜寒帯での話,つまりいわゆる風水文化地帯でのですけどね.
 たぶんこういうのが,「原始風水」なのだと思います.


●「背山臨水」
 「坐北向南」と並んで,よく使われる言葉に「背山臨水」があります.
 山を背にして,水に臨めば,排水は良いので乾燥してますし,飲用水や農業用水にも不自由しません.生活にも,農作業などに用いるのにも,良い環境ですね.

 しかし,「南向き緩斜面」は良いですが,背後に山が迫っていて,急斜面があるのはいけません.
 理由は,この時期になるとよくわかりますね.
 普段はなんでもなくても,梅雨時あるいは豪雨が続く時期には,急斜面は崩壊の危険があります.
 斜面崩壊で被害にあった人たちの多くがこういいます.
 「ここに何十年も住んでいるが,こんなことは一度もなかった」

 以前は,被害が起きるとよく使われた言葉「百年に一度の豪雨」.最近は,あまり使われませんね.「百年に一度」があまりに頻繁に起きるからでしょうか.

 人類紀になってから,二百万年とも二百五十万年ともいわれますが(最近定義が変わったせい),そうすると百年に一度の災害は,二万回から二万五千回は起きていることになります.日本列島に,普通に人が住むようになってから約一万年が経っていますが,それからでも,百回は起きていることになります.
 これは,「滅多にないこと」ではなく,「頻繁に起きていること」ということになります.

 実際に,斜面崩壊の被害にあった場所でなくても,こりゃあ危険だなと思われるところはたくさんあります.昔は,住むところよりも農作地にするところの方が大事でしたから,仕様がなかったのでしょうけど,「人の命は地球より重い」となった現在でも,そういうところに住み続けている人は多いようです.
 さらに,大都市周辺では,住宅地が周辺に押しやられているために,ますます,そのような危険なところに住宅が建てられ,梅雨時,とくに梅雨の終わりの豪雨時には悲しいニュースが流れます.
 ニュースをみるたびに,なんでこんな危険なところに…と,思いますが,「危険だ」という警告はめったに受け入れられることがありません.
 地質学者や地形学者は警告していないのか,警告が受け入れられるシステムができていないのか,警告しても受け入れられないのか…,毎年,毎年,繰り返していますね.

 だったら,いっそのこと,「ここは風水が悪い」と宣告したくなりますね.

 「背山臨水」は山を背にすることですが,排水が良く乾燥した土地(しかも,「水」に不自由しない)ということであって,急斜面の下に住むことではありません.

 ところで,「背山臨水」は陰陽五行説で説明できるのかというと,これまた,微妙なところです.北の玄武には「水」が配当され,南の朱雀には「火」が配当されているからです.どう説明するのか,陰陽五行説および風水の専門家に解説を聞いてみたいところです.


●盆地地形
 前回,“せいきモデル”の図を示しましたが,風水の良いモデル的な地形は,まあ,あのような地形なわけです.
 なぜ,このような地形が良いのか,これも,陰陽五行説では説明できないかと思います(その気になったら,するかもしれないですけどね).

 これも,じつは原始風水だとおもいます.
 直感的に理解できる.
 たとえば,石狩平野のような広大な平坦地を思い浮かべてください.

 札幌農学校が目指したような近代西洋式農法なら,広いだけの土地の方が使いやすい.
 しかし,石狩平野は,春先や秋の終わりに,昔は,馬糞風と呼ばれた強烈な季節風が吹きます.原因は日本海から太平洋まで遮るもののない巨大な平野だからです.

 風水が発生したころの,人力,精々が牛力程度の農業では,広いだけの土地は,逆に使いにくい.それだけでなく,馬糞風のような季節風が吹くと,農作物の植え付けに影響があるし,長雨などで収穫が遅れると,今度は晩秋の北風に痛めつけられることになります.

 それならば,“せいきモデル”のような,盆地地形が季節風の影響が少なくてよろしい.上川盆地なんかに住んでいると,強風はめったに吹かないので,春先,秋口に札幌に遊びに行くと強い風にびっくりします.

 つまり,これも原始風水.良い土地選びの基本なわけです.


●原始風水
 原始風水は,陰陽五行説の影響は受けていないように思われます.
 風水の基本は「陰陽五行説」だといわれながら,陰陽五行説では説明できない,なおかつ直感的な「風水概念」があります.これは,原始風水が生き残っているものなのでしょう.
 したがって,風水の基本が「陰陽五行説」なのではなく,陰陽五行説が「原始風水」を取り込んだのだろうと思われます.

 日本にも,朝鮮半島にも,独自の風水があります.それは,地域によって環境が違うからです.
 したがって,中国にも独自の風水があるはずですが,中国風水は非常に見えにくい.それは,本場中国の風水は「陰陽五行説」で覆い隠されているからだと思います(残念ながら,中国の風水を解説した良い本が見あたらないので,「である」と言い切ることはできませんが).
 しかし,「陰陽五行説」も,辺境の日本あたりまでくると「メタ陰陽五行説」となって変化し,「陰陽道」となりますので,中国風水とはかなり異なったものになり,結果として「風水」も異なっていることからもわかります.

 はっきり言ってしまえば,「陰陽五行説は,中国風水のノイズ」なのでしょう.
 あるいは,土俗の原始風水が,権威付けに「陰陽五行説」を利用したため,各地の独自性が見えにくくなっているのかもしれません.

 

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