2010年7月15日木曜日
中国の風水
相変わらず,「中国の風水」についての,よい文献はみつかりませんが,おもしろい本をみつけました.
それは,山本 斌(1975)「中国の民間伝承」(太平出版)です.
出版は1975(昭和五十)年ですが,じっさいに調査されたのは,1939〜42年ごろのこと.著者は東亜研究所と満鉄調査部のおこなっていた「中国農村慣行調査」にくわわり,現地の農民から直接採取したものだそうです.
ここには,風水をメインにおいた章はありませんが,収集した民間伝承の背景には,当時の民間人の「風水思想」がいたるところにあらわれています.
おもしろいことに,当時の普通の中国人の「風水」にと,いまの日本の風水先生や大学で民俗学かなんかやってる(いわゆる“文献派”)の教授たちがいうような「風水」とは,ひどいギャップがあります.
それは「南蛮子伝説」のところにありますが,村にいる風水先生は普通の農民と変わったところはなく,「いわば旧式の知識人,長い人生経験を通じての博学な合理主義者である.したがって,老人のほうが信用される度合いが高い.多くは家伝の周易の書を持ち,古老から口伝によって受けた漢学の素養を身につけている.しかし,道観(道教の廟)などで修行をつんだりしたような人はいない.」なのだそうです.
村の風水先生は「道教の修行」などしていないということです.
日本の風水先生や大学教授たちは,どちらも風水と道教は密接な関係があるといっていますが,どうやらそうではないらしい.
「南蛮子伝説」をじっさいによんでみても,一つの「風水ルール」はありそうですが,道教に密接な関係ある話など,まったくでてこないですね.
これはいったいどうしたことでしょう.
もちろん,「「県城は,村よりももっと規模の大きい風水の上に,もっと学のある偉い風水先生の判断によって構築されたに違いない」と農民はいう.」ということも記されていますから,こちらは道教の素養などあるかもしれないですね.
ようするに,権力下の公的な風水先生と,それとは別の,村の,民間の風水先生がいるということになりますでしょうか.
そして,民衆の身近なところにいる風水先生は,道教とかの権威づけは必要なく,実用的なのだということを意味しているようです.
日本に蔓延している“風水”は,“ちまちま派(インテリア風水とか)”も“文献派(大学教授連)”も,道教とかの権威のもとで論理を展開しているようですから,実際の中国の民衆が信じていた「風水」とはちがうものである可能性が非常に高いということになりますね.
してみると,(困ったことに,)日本では,“ちまちま派”も“文献派”も,おなじ穴のムジナということになるのでしょうか.
そういえば,“ちまちま派”は“文献派”のいうことを,明らかに「権威づけ」として,使ってますね.
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